同胞『常に環の外にいる者』オメガと『北部監視者』アントラージェの失態は実に興味深いものであった。
『運命の書』の記述が大きく変動したその渦中に、親愛なる友アントラージェがいた事だ。
彼はヒトの血を受け入れ、ガランディウム圏から姿を消した。
我が使命故に、私情を挟む事はしたくは無いが……残念な結末であった。
サマルドゥーンの英雄レフィリム・ローハイムの孫、カールヴラット・クォーレル。
私は当初、彼の信念がここまで我々の動きを封じるとは思ってはいなかった。
祖父レフィリムの予定外の行動は『運命の書』をいささか逸脱してはいたが、その後オメガによって筋書きは修正されたので問題は無かった筈である。
だが一度書き換えられた血の流れは娘のラミィ・クォーレルにも影響を及ぼし、第一次アヴァンクーザー圏の壊滅を招く予定のセイランが人となってしまった。
私はこれほどまでに過酷な運命を背負っていながら『運命の書』を変える人間を見た事がない。
それ故脅威に思う。
彼らの宿命を変えた力は一体何だったのかと。
さて、その後の歴史についても触れておこう。
以下は設定された予定ではない。
異分子どもが引き起こした特筆すべき事態の結末である。
ヴレード皇帝カイゼフの葬儀後、王座には皇后リレゼの息子が即位した。だが、魔術師オメガが行方不明となって以来、政治・外交共に衰退する一方であった。
ファルカン・ウッディア暦998年、古代魔術師の加護を失ったヴレード帝国は国内のガランディウム神殿勢力に圧され、協定を結んでいた闇の大国デスロニア帝国の罠に陥り支配下に置かれることとなった。
魔族の出現は日増しに増え、ソリヴァーサにあるアヴァンクーザー本殿はついにアストラル結界の衰退を発表。
人々は精神構造の弱さを曝す一方で、退化しつつあった動物としての戦闘能力を高めていく。
神の後ろ盾を失った人間が、本来あるべき姿へと回帰し始めたのはこの時期である。
相次ぐ分殿責任者の死亡(あるいは行方不明)について本殿で様々な憶測が飛交い、ソル・ハダトの後継者選びに三年を費やした。
だが最終的に選ばれたのは、高司祭になるべく新たに修行を積んだ聖女サーラの息子セイランであった。
ラミィ・クォーレルはテオフィロと共に結成した自警団の指導者となり、ソル・ハダト分殿の最高司祭セイランと共に魔族に対して独自の砦を築いていった。
またこの頃、『運命の書』に約束された彗星が東方に落ち、預言の双子がエルゼリア大陸で誕生した。
やがて、予定通り時代は終末へと突き進むだろう。ここが分岐地点である。
これ以降の歴史は、次の章にて綴るとしよう。
神の求める答が、おそらくその先にあるだろう……。
『神々の黄昏』私はこの巻の最後を聖典アヴェル・ロードの封印された箇所で締めくくることにする。